タイタンの妖女

カート・ヴォネガット著のタイタンの妖女を読んだ。僕が高校のときの、爆笑問題が作家を招いてトークを繰り広げる番組「爆笑問題のススメ」の最終回で太田が推薦した本だ。太田は番組で、太宰治人間失格宮沢賢治銀河鉄道の夜、そして、カートヴォネガットタイタンの妖女を紹介した。中でも、太田の人生の価値観を激変させたのがヴォネガットだと言っていた。


僕は、当時、ちょうど文学に目覚め始めた時期で、タイタンの妖女をいつか読んでやろうと決意した。


しかし、何と無く太田の人生を変えた本ということで、自ずと自分の人生を変える一冊でもあるはずだと錯覚し、読むべき時期と精神状態を決めあぐねていた。そして、そのまま月日がたち、このほどついに僕は書店でヴォネガットの作品を手にする決意ができた。就職活動という今後の人生を大きく左右する選択をしようとしている時期だからこそ、決断した。


早速読んでみると1ページ、2ページ・・・


・・・・気づくと時計の針が一周回っていた。


感想は、とにかく壮大かつ緻密。自らを無関心の神と豪語する人物が、地球人と火星に移住させられた地球人との戦争によって覇権を握り、地球を統一する。それで、一件落着と思いきや、実はその神さえも・・・


SFに分類されるそうだが、政治的であり、哲学的であり、科学的な作品。でも、作者が言っていることは一貫していて、真実は探しても見つからないということ言っている。真実や意味というのは存在するものではないから、利益や権利や宗教や自己実現の欲求に苛まれることなく、友人や家族、小さな幸せなどもっと足元を見るべきだと言うこと、そして、その過程が真実であるのだと。


僕は、この本を読み終えて少し肩の荷が下りた気がした。