能登と新潟中越沖

能登半島地震、新潟中越沖地震で顕在化した課題、事実などを鑑みてみる。


まず、能登半島地震では、新潟中越沖地震の教訓が生かされた。それは、避難所などで、保健師が中心となり、被災者がエコノミークラス症候群にかかるのを防ぐため、手軽な体操などを実施したことだ。これによって、被災者がエコノミークラス症候群にかかることはなかった。逆に問題となったのは、住宅の再建には、被災者生活再建支援法により、支援金が給付されるが、その資金は家の再建そのものに使えず、ローン利子の支払いや家屋の撤去作業にしか使えないということだ。石川県は独自に、住宅が全壊した被災者に400万円を支給する制度を作ったが、再建そのものに使用できないのは問題だということになった。(後に被災者生活再建支援法が改正され、住宅の再建にも適用できるようになった)

自身が2度現地に足を運んで、問題に感じたことは、仮設住宅のあり方だ。仮設住宅の入居者は、家賃が無料であるということを負い目に感じ、間取りが狭いこと、雨が降れば、屋根に当たる水滴の音がうるさいこと、壁が薄く隣人の話し声が聞こえることなど、不満に思うことも言えない状況である。家賃が無料とはいえ、2年間住む環境にしては、厳しくないか。もっと頑丈な造り、もしくは、住宅の再建を促すような制度は確立できないものか。

次に、住宅の再建に悩む被災者が多いということ。住宅の再建には多額の費用がかかるが、補助金は限られている。だから、再建しようか、公営住宅に移ろうか悩む人が多い。これについては、自分としてもどうしたらよいのかは分からなかった。


新潟中越沖地震では、柏崎市刈羽村原発放射能漏れやそれに対する初動処置のミス、住民への説明不足など、原発に対する不信感が強まった。大量の油に火が引火した場合に使用する化学車などを常備している原発が全国で11社中5社だったことや、耐震基準で想定していたよりも、地震の加速度が高い値であったなど、地震に備えた原発の安全体制の脆弱さが明白になった。原発は、住民に対する説明責任、安全確保の責任を再認識せざるをえない震災であった。

11社はその後、新耐震基準を満たすかの調査を行い、安全であるという結果を公表したどのような調査を行い、どのような理由で新耐震基準が制定されたかなどの詳細な説明がないので、結果に対する信頼性を疑う。最新の震災研究、科学技術を前提としたとしても、十分な説明が必要であると思う。ブラックボックス化は、問題を先送りするだけで、いつか露呈する。

しかし、今回は緊急地震速報が活用され、事前に、建設現場のクレーンなどが停止したという、科学技術が生かされた事実もある。今後、適切な情報開示によって、科学技術をどんどん防災に生かすべきであると思う。