5次元ポケット

もしも世界が4次元(空間の3次元と時間の1次元を合わせた)ではなく、5次元だったらどうなるのか?
5次元の世界では、見知らぬ幽霊とカフェでコーヒーでも飲みながら競馬の話でもできるのだろうか?
ハーバード大学のリサ・ランドール博士は、この世界が5次元で成り立っている可能性を示唆している。
しかし、それは、幽霊と会話できるというような非現実的な妄想ではなく、ちゃんとした数式で示されている。
リサ・ランドールいわく4次元の世界がシャワールームのシャワーカーテンに付着した水滴だとしたら、5次元の世界は、シャンプーやタオルがあるシャワールーム全体の空間であると例えている。シャワーカーテンに付着した水滴は、シャンプーの形や、ましてその洗浄力を知ることはできない。つまり、4次元の世界からは5次元の世界を探知することは不可能であるのだが、しかし確かにそこに5次元の世界があるというのが、リサ・ランドールの主張である。
触れたり探知したりできない次元であるのならば、わざわざこの世界を5次元と定義しなくても4次元のままでいいじゃないかと反論したくなるのだが、そうでもないらしい。
この世界が5次元で成り立っていると仮定すれば、最も身近でありながら最も未知な力、重力の問題について解決するらしい。自然界には4つの力が働くとされている。重力、電磁気力、原子核の陽子、中性子間で働く強い力、中性子ベータ崩壊に関連する弱い力の4つであるのだが、重力だけが、他の3つの力と比べてスケールが小さい。つまり、弱い力であるのだ。この問題が、リサ・ランドールの理論では、5次元の世界を仮定し、重力は、5次元の世界とやりとりがされているため、小さくなると説明づけられている。
この本を読んで、突如世界は4次元ではなく5次元である可能性があることを知った。しかし、横っ面を突然はたかれたように、どう反応してよいかわからないような心情になった。5次元であるかもしれないが、5次元の世界はいまだ確認されていないし、確認されないかもしれない。これは、典型的な理論が、観測よりも先行している状態なのだろう。
このような状態は、自分を科学を勉強しているというよりも、SF小説を読んでいるような気分にさせる。そんな世界があるとすれば、面白いだろうなと錯覚させてくれる。しかし、SF小説と一線を画しているのは、この理論が近い将来現実にあり得るという観測結果がでるかもしれないということだ。その時の驚きは想像では計れないものになるのではないだろうか。
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