教授、ボランティア、NPOの取り組み

今回は、被災地以外で見てきた、教授や学生ボランティア、NPOの被災者支援や減災における取り組みの意義とそれらを伝える意義について検証してみようと思う。

まず、教授や学生ボランティア、NPOの被災者支援や減災の取り組みについて。これは、本当に行政が担うことのできない重要な役割を担っていると思う。例えば、阪大大学院修士1年の宮本さんは、4年の時に、新潟中越地震被災地の山古志村に短期間の間であるが、移住した。新潟での生活では、村人が進める山菜や特産物をいただいては、純粋に特産物の美味しさに感動したリアクションをとっていたという。そんな、特産物を食べて美味しがる宮本さんを見て、村人は村の価値を再認識し、村での生活に自信を持つように、村の寄り合いなどにも積極的に関わるようになっていったという。そして、地域での防災マップ作りなどに積極的に村人が関わるようになり、災害時に重要となる隣人同士の付き合いや繋がりが生まれたという。このように、宮本さんが中山間地に入り込み、どうすれば、村人が積極的に復興していくかを真剣に考えながら生活した結果、村人の変化に気づき、その変化を地域の繋がりや防災に繋げていったのではないかと思う。そう分析すると、宮本さんが果たした役割は、決して行政ではできなかったし、村人でもできなかったことだ。第三者が、村の内部に介入していくことで、得られた成果であると思う。そういった意味で、ボランティアやNPOの取り組みは、被災者に寄り添うという心、被災者の視点を大事にするという立ち位置を忘れていないからこそ、行政では成し得ない、支援の隙間を埋めているものだと思う。足湯隊にしても、仮設住宅に行って、被災者とマッサージしながらコミュニケーションをとることで、被災者の悩みを聞いたり、他愛のない話をしたりして、被災者の心を和ませている。そういった被災者に寄り添った取り組みというのは、ボランティア、NPOならではの素晴らしい取り組みだと思う。

教授やNPOの減災に対する取り組みも素晴らしいと思う。NPOのレスキューストックヤードは、「命をまもる智恵」と題して、伊勢湾台風阪神淡路大震災など日本中で発生した災害から人々はどのような教訓を得たかを紹介している。さらに、減災について、自由に議論しあう減災カフェなど息の長い取り組みを続けている。最近では、大阪の上町台地で来るべき災害についてどう備えるかも、町の住人を巻き込んで議論している。上町台地では、阪神淡路大震災でも被害が大きかった長屋が多くあるが、その長屋をどう変えていくのか。コンクリート付けにして、耐震化を進めるのではなく、長屋という隣人同士の繋がりが密接な文化を残しつつ、耐震化を進めていくにはどうしたらよいかということについて、真剣に考えている。このような教授やNPOの取り組みも、行政ではできない、町の住民を巻き込み、町の住人と災害に対してどう備えるかを議論していくとう、新しい減災のあり方を模索していると思う。

このように、教授や学生ボランティアやNPOの被災者支援や減災に対する取り組みは、被災者や町の住民に寄り添った取り組みであり、被災者の復興に対する思いや町の文化を大切にしたいという住民の思いを最大限に取り入れた取り組みであると思う。だから、このような減災の取り組みが本来あるべき姿なのではないかと思う。


では次に、そのような教授や学生ボランティアやNPOの被災者支援や減災に対する取り組みを伝えることにどのような意義があるのかということについて考えてみる。一義的には、そのような取り組みを伝えることで、一人でも多くの人に災害への関心を持ってもらえたり、読者自らが、そのような取り組みに参加することを手助けできるかもしれないということではないかと思う。
そのような情報を伝えることで、災害に関心がある人は、情報を基に、積極的に減災の取り組みに関与していけるし、関心のない人が関心を持って、災害に備えることがあるかもしれないと思う。
つまり、減災の輪を広げていくのに、新聞社が、教授や学生、NPOの被災者支援や減災害の取り組みを伝えていくのに有効であると思う。

そして最後に、教授や学生、NPOの人々は、本当に心優しい人ばかりであると思う。神戸大の藤室さんは、神戸大在学中に阪神大震災を経験した。その後、総合ボランティアセンターという組織を立ち上げ、被災地でボランティアを続けた。そして、現在博士課程4年で、研究を続けながらもボランティア活動に勤しんでいる素晴らしい方だ。僕は取材で、何故ボランテイィアを13年間も続けているのかと伺ったときに、藤室さんはこう答えた。「阪神大震災直後のボランティアをしているときのみんなの表情が良かった。極限状況でも困っている人のために、みんなが生き生きとした表情でボランティアをしていた。それを見た時にこんな表情でみんなが暮らせるような社会になってほしいと思った。逆に、人間の汚い部分も震災ではたくさん見た。だから、尚更その思いが強くなった」と。それを聞いた時に本当に素晴らしい方だと思った。その思いを実現するために、13年間活動しているなんて、何て意思が強く優しい方なんだと思った。このように、被災者支援、減災に携わっている人々の熱意や優しさは素晴らしいと思ったし、そのような人々の思いを伝えることができれば、災害に関心を持つ人も増えるのではないだろうか。