耐震化

国や自治体が進める減災に関する施策において、主なものに住宅、災害時に避難所となりえる公共施設の耐震化がある。しかし、一般住宅において、耐震改修補助制度を利用して耐震改修をした住宅は、改正耐震改修促進法が施行された2006年以降、17政令市と東京23区で実際に利用されたのは、計約5100件にとどまっている。大都市では、耐震性を満たさない住宅が計約290万戸と推定される。大都市部で、耐震改修が進んでいない現状である。
自治体は、耐震診断を行う際に独自の補助制度を設けている。しかし、06年度以降、予算総額49億円が用意されながら、実際に制度を利用したのは、約2万5000件(22億円分)で、実際に改修が行われたのは、約5100件で、診断を受けた件数の2割程度。一般的な一戸建て住宅の場合、補助を受けても自己負担は100万〜200万かかり踏み切れない人が多いという。
さらに、小中学校の校舎や体育館の耐震診断結果の公表を義務づけた改正地震防災対策特別措置法で、実際に公表した自治体が全体の4割にとどまっており、財政難で将来の耐震化計画を立てられず、「公表すれば住民の不安をあおる」などが主な理由。震度6強の地震で倒壊の危険がある小中学校施設は全国で約1万棟あるなかで、耐震改修が進んでいない現状がる。

これらの事実から、自治体と市民の財政難により、住居や公共施設の耐震化は思うように進んでいない現状がはっきりと分かる。しかし、阪神淡路大震災では、住宅被害が全半壊だけで計25万棟に上がり、死亡した原因の約8割が住宅の倒壊による圧死だっただけに、来るべき震災に備え、早急に耐震化が促進されることが必要なのは明白である。自治体の中には、担当職員が一戸一戸個別に訪問して、耐震診断や耐震改修を促している所もある。費用のかかる耐震化を促すには、そのように、地道な息の長い取り組みが必要であると思うし、メディアも災害の発生確率や耐震化の必要性を伝えていくことが使命であると思う。