空には月が

仮に命が永遠だとしたら何をするか?
とりあえずいつでも行ける大学には行かなくなるだろう。
バイトして、金をためて、世界を見尽くすか。
アトムのようなロボット開発に没入し続けるのか。
世界文学全集を読破するか。
それとも、なにもかもに飽きてしまうのか。

前々から気になっていた森博嗣著の「スカイ・クロラ」を読んだ。年をとらない子どもがキルドレと称され、戦闘機のパイロットとして、戦場の第一線で敵機と戦う話。主人公は、飛行機に乗って空を飛ぶこと、戦闘のみに、愉悦を感じ、いつか、空で死ぬことを夢みる。戦闘には常に死がつきまとうのだが、主人公は、死をおそれずむしろ望んでいるような印象を受けた。

命が永遠ならば、人は最も美しい死に方を夢見るものなのだろうか。理解に苦しんだ。人の周囲の環境や望むこと、やりたいことは周期的に変わっていく。人間の行動への欲求、自己実現の欲求、表現の欲求・・・あらゆる欲求は、命が永遠であれば、なくなってしまうものなのだろうか。そうであるような気もするし、そうでないようなきもする。でも、できれば後者であってほしい。それにしても、物語の新しい境地を垣間見た気がした。森博嗣の想像力に感服。少し村上春樹的な文体が癪だったが。

スカイ・クロラ (中公文庫)

スカイ・クロラ (中公文庫)