熱いよ

黒田清 記者魂は死なず」を読んだ。大阪読売社会部で、黒田軍団として全国に名を馳せ、読売退社後も、読者を大事にしたジャーナリズム活動を死ぬまで貫徹した新聞記者の伝記。久しぶりに面白くて一気に読み終わった本だった。

黒田清の新聞記者のスタイルは憧れる。企画物を得意とし、暴力追放キャンペーンをしたり、世界を旅しながらルポを書いたり、一般的な客観報道に徹する記者と違った記事を書き続けている。記者としての主観、社会を見る目を新聞記事に反映して認められるというのは、今の新聞には無い傾向だけに憧れる。しかし、読者や社内で認められたのは、やはり黒田の新聞記者としての腕があったからに違いない。本著では、黒田の新聞記者に対する価値観が随所に引用されているが、読者を大事にし、読者の生活を第一にする信念には共感できるし、そういう所が記者としての手腕にも関わってくるのであると思う。本著で黒田はこういっている、「私達は、一体何のために新聞を作っているのでしょうか。小さくても幸せな家庭を守るため、というのが私の回答です。さまざまな家庭がみな幸せだとは限りません。きのうまで幸せだった家庭でも、ちょっとした事故でこわされてしまいます。たとえば戦争が起きたらどうでしょうか。個人の意志とは関係なく、夫と妻は離れ離れになり、生きてまた会えるかどうかわかりません。戦争のような大きなことではなく、交通事故や火事、強盗、思い税金や高い学費、そういった日常生活のなかで家庭の幸せを奪っていくものはいっぱいあります。よく言われることですが、お金があるから幸せとは限りません。夫婦子どもがそろっているから幸せだとは限りません。幸せは最終的には人の心の中にあるのだと思います。だから新聞記者が幸せな家庭を守らなければならないということは、戦争が起こらないようにすることであり、交通事故が少なくなるように努力することであると同時に、Hさん一家(投稿者)のような生き方を守ることなのです」と。これは、黒田が、読者から手紙を募集し、その手紙に対する返答を書く、「窓」というコラムの企画である。ともすれば、権力体制のチェック、不正義の追及といった上から目線で物を見がちな新聞記者の仕事を、黒田は、読者の生活を守るのが新聞記者の仕事と主張している。そういった、社会的弱者や読者を大事に思う心が、黒田が書く新聞記事を広く認められるものにしたに違いないと思う。そして、黒田の新聞記者のあり方には本当に共感する。自分も記者になれたら、そういった姿勢を大事にしていきたいと強く思った。

[rakuten:book:11562003:detail]